Diary


【ロシア】サンクト・ペテルブルグ①

(2003年10月3日)

~建都300年~ サンクトペテルブルグ交響楽団"KLASSIKA"との共演

ロシア連邦 サンクト・ペテルブルグに2003年9月29日~10月7日の日程で行って参りました。今年は建都300年ですので、街中はとても活気に満ち溢れていました。

皆様は、サンクト・ペテルブルグを "北のベニス" とも呼ばれる、水の都だという事は、ご承知でしょうが、実際に行ってみると、フィンランド湾に流れ出るネヴァ河の壮大さ、支流や運河を含めると65本の川があり、まさに "水の都" でした。

私たちは、目抜き通り、ネフスキー大通りに面している、サンクト・ペテルブルグ・フィルハーモニー "グリンカ・ホール" で演奏会を行いました。とても素敵なホールで、シャンデリアが印象的でした。このホールに入った途端、「ここで演奏できる!」と思うと胸が熱くなりました。昨年のチェコ共和国でのオーケストラ共演よりも緊張しました。それは、団員の人たちが、とても真面目な顔で私たちを迎えて下さったからです。今回の指揮者、アレクサンダー・カントロフは、交響楽団の主席指揮者兼音楽監督ですが、彼の時は、団員が皆真剣に取り組むからだそうです。そんな訳で、1回目のリハーサルの時は、少し緊張しましたが、通して共演を終えるや、団員たちは拍手を下さり、「ブラボー」の声も上がり、カントロフも笑みを浮かべ、大変満足して下さったのでホッとしました。

10月3日の本番のプログラムは、モーツァルト「フィガロの結婚」序曲に続き、直彰のシューマンのチェロ協奏曲、そして休憩を挟んで、真紀子のグリーグのピアノ協奏曲の順序で行われました。本番当日、一番気になったのはお客さんの入りでしたが、これが何と満席でした。私たち日本人の共演で、ロシア人たちは音楽会に足を運んで下さるのかが不安だったのですが、沢山の方が聴きにいらして下さったので嬉しかったです。何故こんなに聴衆が多いのか、通訳の方に聞いてみましたら、もちろん曲目が良かった事もありますが、何と言っても、今やサンクト・ペテルブルグではカントロフの人気度が凄く、多くのファンが毎回押しかけるそうです。私たちだけの目的ではなかったにしても、大勢の聴衆に囲まれ、実力・人気、共に最高の指揮者に振って頂けて、本当に光栄でした。直彰の時も、真紀子の時も、拍手が多く、大変幸せな気分でした。真紀子の時は、1楽章が終わるや、拍手が鳴り響き、一瞬何事かと驚きましたが、ロシア人は楽章と楽章の間でも、感激した時には拍手を送る、という事を終演後ききました。2、3楽章が終わると、聴衆の熱い熱い熱気が舞台にも伝わってきました。この時が、演奏家にとって一番幸せな一時です。アンコールの拍手も鳴り、指揮者と一緒に出たり入ったりしましたが、急遽、ピアノソロの、ドビュッシー「月の光」を弾きました。

本番前は緊張するけれど、弾き終わると必ず「弾き終えた!」という満足感と、「今日という日は一生忘れないだろう」という大きな感動を味わえる事は、本当に幸せだと思います。

4日~7日は、今まで頑張ってきた骨休み。エルミタージュ国立美術館は見事なスケールです。コレクションは、何と300万点にのぼるそうですから、到底これらを全部見て回ることは不可能です。ここに来るまでは、ロシアの宝物が中心なのかと思っていましたが、19世紀~20世紀のフランス芸術、印象派からセザンヌ、ゴッホ、ゴーギャンに至るまで展示されているのには舌を巻きました。パリのルーブル顔負けです。
他には、高速艇に乗って、ピョートル大帝の建てた "夏の宮殿" ぺテルホフに行きました。"下の公園" と "上の公園" から成り、その総面積は1000ヘクタールという、壮大なものです。上下公園の噴水は140もあるそうです。本当に見事な噴水公園で感激しました。しかし、10月初旬で水が凍るため、止めてしまうそうなので、私たちはギリギリ見ることが出来てラッキーでした。
皆様は、"ロシア5人組" をご存知だと思いますが、この人たちは全員、アレクサンドル・ネフスキー大修道院にある、チフヴィン墓地に埋葬されています。チャイコフスキーの隣にキュイ、ボロディン、ムソルグスキー、リムスキー・コルサコフ、バラキレフの順に埋葬されていましたが、中でも中心的存在のバラキレフのお墓は立派でした。もちろん、チャイコフスキーのは別格ですが。その他、同じ墓地にある、文学者のドストエフスキーのは、入り口近くに、立派なのが建っていました。

あとは、カザン聖堂、スパス・ナ・クラヴィー聖堂などにも行きました。イサク聖堂では、展望台があり、サンクト・ペテルブルグの街が一望でき、眺めは格別でした。
ホテルは、カザン聖堂の前(ネフスキー大通りの近く)にあり、とても気持ちよく1週間を過ごせましたが、本番前日の夜に限って、停電になり、お湯も出ず、ろうそく1本の生活でした。翌日の準備も出来ず、大慌てしましたが、翌朝には元通りになっていてホッとしました。
これ位のハプニングはロシアでは日常茶飯事ですから、これくらいで驚いてはいけないのでしょう。今回は大きな事件もなく、体調も崩さず、無事に1週間を過ごせた事は、本当に有難かったです。また、是非ロシアに足を運びたいと思います。
最後に。ロシア人は、美男・美女の集まりです。道で行き交う若者たちは、本当にかっこいい(素敵)なので、とても目の保養になりました。ロシア人自身、それを意識し、「世界一美しい民族だ」と自負しているそうですが、全くそう思います。